「また同じことで落ち込んでしまった」
そんな経験はないでしょうか。
人から何か言われると、必要以上に気になってしまう。
新しいことに挑戦しようとすると、なぜか不安になる。
本当はやりたいことがあるのに、一歩が踏み出せない。
そして最後には「どうして私は変われないのだろう」と、自分を責めてしまう。
この繰り返しの背景には、思考のクセが関係していることがあります。この記事では、認知科学の視点からその仕組みを解説します。
思考のクセとは何か
思考のクセとは、無意識に繰り返している考え方のパターンのことです。
認知科学では、人間の思考や行動の多くは意識的な判断ではなく、無意識のプロセスによって処理されていることがわかっています。
つまり私たちは「自分で考えて行動している」と感じていても、実際には過去の経験から形成されたパターンに従って反応していることが少なくありません。
同じ言葉を聞いても気にならない人と、何日も引きずってしまう人がいる。
同じ失敗をしても「次に活かそう」と思う人と「やっぱり私はダメだ」と思う人がいる。
この違いを生み出しているものの一つが、思考のクセです。
思考のクセはどこから来るのか
思考のクセの形成は、生まれてからではなく、母親のおなかの中にいる時から始まっていると考えられています。
近年の研究では、胎児期から母親の感情や環境の影響を受けていることがわかってきています。
もちろん、胎児が複雑な思考をしているわけではありません。
しかし、生まれてからの認知や反応の土台となる部分は、想像よりずっと早い段階から形づくられていると考えられています。
そして生まれた後も、
家庭環境、学校での経験、人間関係、社会的な価値観…
無数の影響を受けながら、私たちは無意識のうちに「ものの見方」を身につけていきます。
認知科学では、この「ものの見方」が新しい出来事を解釈するフィルターとして働くことがわかっています。
過去の経験から作られた見方が、
今起きていることの受け取り方を自動的に決めている
そういうことが日常的に起きています。
思考のクセが生きづらさにつながるとき
この仕組み自体は、日常生活を効率よく送るために必要なものです。しかし、それが今の自分を苦しめる方向に働いている場合、生きづらさの原因になることがあります。
たとえば、「失敗してはいけない」という見方が強いと、挑戦すること自体が脅威として感じられます。
結果として、行動を避けたり、小さなミスを必要以上に大きく受け取ったりするようになります。
「人に迷惑をかけてはいけない」という見方が強いと、助けを求めることが難しくなります。
一人で抱え込みやすくなり、気づかないうちに疲弊していきます。
問題は「ものの見方」の存在そのものではなく、それが現在の状況に合わなくなっている場合です。
かつて自分を守るために必要だった考え方が、今は自分の可能性を狭めている
そういうことが起きていることがあります。
気づくことが、最初の一歩
思考のクセは無意識に働いているため、本人が気づきにくいという特徴があります。
私自身、そのことを実感した経験があります。
長い間、私は母に反発していました。母の考え方や反応が、どうしても受け入れられなかったんですね。
でもある時、ふと気づいたのです。
反発していたはずの母の「ものの見方」が、自分の中にもある、と。
無意識のうちに受け継いでいた。
それに気づいた時、不思議と責める気持ちよりも、腑に落ちる感覚がありました。母もまた、長い時間の中で身につけた「ものの見方」を生きていたのだと。
思考のクセは、強い意志で変えるものではなく、まず気づくことから始まります。
一つの方法として、感情が強く動いた瞬間に立ち止まってみることがあります。
落ち込んだとき。
イライラしたとき。
強い不安を感じたとき。
「今、自分はどんな考え方をしているだろう」と問いかけてみる。そしてもう一歩踏み込んで、「この見方は、いつ頃から持っているだろう」と辿ってみる。
すぐに答えが出なくて構いません。
ただ観察するだけで十分です。
認知科学では、こうした自己観察のプロセスが思考パターンの変容につながることが示されています。
自分を責めることではなく、自分を知ることが変化の入口になります。
思考のクセと、未来の関係
思考のクセに気づくことは、過去を掘り下げることだけを意味しません。
「これからどんな未来を生きたいのか」という問いを持つことで、これまで当たり前だと思っていた「ものの見方」が緩んでいくことがあります。
人は過去の経験だけでなく、自分が思い描く未来にも影響を受けながら生きているからです。
過去を理解することと、未来を描くこと。
その両方が、思考のクセにアプローチする上で大切な視点です。
おわりに
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なぜ人は変われないと思い込んでしまうのか、
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