「好きなものを食べていいよ」
ある日、そう言われてお寿司屋さんに行く機会がありました。
せっかくの機会ですから、
何を食べようかな?
どれが好きだったかな?
本来なら、ワクワクしながらメニューを開く場面だと思います。
ところが、当時の私は違いました。
私が真っ先に見ていたのは、食べたいネタではなく「お値段」だったのです。
少しでも安いもの
相手に迷惑をかけないもの
無意識のうちに、そんな基準で選ぼうとしている自分に気づきました。
そしてふと、「私は今、何が食べたいんだろう?」と自問したとき、何も答えが出てこなかったのです。
その瞬間、私は愕然としました。
頑張ることを優先してきた人ほど陥りやすい罠
振り返ってみると、私は長い間、自分の気持ちよりも周囲の状況を優先して生きてきました。
- 家族のため
- 仕事のため
- 誰かの期待に応えるため
- 周りに迷惑をかけないため
こうした生き方そのものが悪いわけではありません。
誰かのために一生懸命になれるのは、とても素晴らしいことです。
ただ、その生活を続けるうちに、気づかないうちに「私はどうしたいのか」を主語にして考える機会が、圧倒的に減ってしまっていたのです。
似たような経験はありませんか?
- 行きたい場所が思い浮かばない
- 本当に食べたいものが分からない
- 欲しいものが特にない
- 毎日頑張っているはずなのに、なぜか心が満たされない
実はこの状態、あなたの心が弱いからでも、感性が鈍ってしまったからでもありません。
脳の仕組み(認知科学)から見ると、非常に自然な反応が起きているだけなのです。
認知科学で紐解く:なぜ「自分の本音」が見えなくなるのか?
認知科学において、私たちは「目の前の現実のすべてをそのまま認識しているわけではない」と考えます。
人間の脳は、五感から入ってくる膨大な情報の中から、自分が「重要だ」と判断したものだけをフィルターにかけて選び、認識しているのです。
もしあなたが長年、以下のようなことを「重要だ」と脳にインプットし続けてきたとしたらどうでしょうか。
- 「周りの空気を優先すること」
- 「自分が一歩引いて我慢すること」
- 「他人の期待に応えること」
脳は非常に優秀なので、指示された通り「周囲の状況や他人の感情」という情報を最優先で処理するようになります。
その結果、トレードオフとして「自分自身の感情や欲求」という情報がフィルターによって弾かれ、認識できなくなってしまうのです。
好き、嫌い、楽しい、つらい。
本当は心の中でシグナルが出ているのに、脳がそれを「重要度が低い情報」として処理するため、本音の声がどんどん小さくなって聞こえなくなっていきます。
理由のない「涙」が出る時、脳の中で起きていること
だからこそ時々、理由もないのに突然涙が出ることがあります。
悲しい出来事があったわけでもない。
それなのに、なぜか涙が止まらない…
そんな経験はないでしょうか。
以前の私は、こうした涙を「自分が弱っている証拠だ」と思っていました。
しかし、認知科学の視点を取り入れた今なら、まったく違う解釈ができます。
この涙は、脳のフィルターによってずっと隠されていた(スコトーマ・心理的盲点に隠れていた)あなたの本当の感情が、一瞬だけ意識の表層に上がってきた状態だと言えます。
ずっと置き去りにされてきたあなた自身が、「ここにいるよ」「私に気づいて」と、脳のシステムを突き破ってサインを送ってくれているのです。
ですから、理由のない涙は人生に負けたサインではありません。
むしろ、「自分の本音に気づき始めた、ポジティブな変化のサイン」なのです。
人生を変える第一歩は「現状観察」から
認知科学をベースにしたアプローチにおいて、現状を大きく変えるための第一歩は、決まって「現状観察」だと言われます。
現状観察とは、「どうして私はダメなんだろう」と自分を責めることではありません。
ジャッジ(善悪の判断)を挟まずに、今の状態を「ありのまま見つめる」ことです。
私の場合は、「大好きなはずのお寿司のメニューから、自分の意志で好きなものを選べなかった」という冷徹な事実を、ただそのまま受け止めることでした。
その時、無理に自分を変えようとしたわけではありません。
「そっか、私はそれほど長い間、自分の気持ちを置き去りにして生きてきたんだな」 そうやって現状を認めただけです。
しかし、この客観的な「小さな気づき」こそが、私の人生の大きな転機となりました。
本当の自分は、今もあなたの中に消えずにいる
もし今、あなたが
「何がしたいのか分からない」
「好きなことが思い浮かばない」
という状態だったとしても、決して焦る必要はありません。
あなたの「本当の自分」や「情熱」が消えてなくなってしまったわけではないからです。
脳の優先順位が変わって、少し見えにくくなっているだけに過ぎません。
まずは、日常の小さな選択から、脳のトレーニングを始めてみませんか?
- 今日のランチ、本当に食べたいものはどれ?
- 休日の午後、本当はどう過ごしたい?
どんなに小さなことでも構いません。
「私はどうしたい?」と、主語を自分に戻して問いかけてみてください。
その現状観察と小さな積み重ねが、脳のフィルターを書き換え、本当の自分との再会へと繋がっていきます。
最後に
私もかつては、自分の好きなものが分からなくなっていた一人でした。
だからこそ今、認知科学の視点を通して、本来の自分らしさと高いエネルギーを取り戻すためのヒントを発信しています。
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